カーボンの作り方について
Q:
FRP素材屋さん日記をいつも見ています。
深い造詣にいつも関心しています。
カーボン繊維ってあるのですが、これらはどうやって作ってるのでしょうか?
ガラス繊維との違いはありますでしょうか?
A:
FRP素材屋さん馬渕です。
まず、繊維はアクリル繊維がその基礎となっています。
だからカーボンを作ってるのは、東レや帝人といった繊維企業なんですね。
体塩化炉による耐炎化工程
アクリル繊維を200度から300度くらいで焼いていきます。
ここではアクリルの繊維結晶が、6角形の背に結晶に変化していきます。亀の甲羅みたいな感じで規則正しく配列した状態といえばわかりやすいですね。
炭化炉による炭化工程
ここから第二段階で焼いていきます。
この段階では、不純物が多く含まれています。
ここから1,000度~2,000度で再度焼いていきます。
ここで不純物を取り除いていきます。
黒鉛化炉による黒鉛化工程
炭素の純度をあげていくと、弾性率が上がっていきます。
2,000度以上の温度で焼いていくことで、炭素の純度をあげていきます。
この段階で、炭素繊維のグレードが決定されます。
弾性率の高いカーボンの製造方法
弾性率が高いカーボンは、非常に高額ですが、これを作るには炭素結晶のサイズをできるだけ広くする。
また、繊維に対してなるべくまっすぐに繊維結晶を持っていく。
という2点で弾性率の向上を図っています。
亀の甲羅の結晶と結晶の間には、結晶粒界という接着部分があります。これは破壊の起点となってしまうため、これを少なくすることが重要なんですね。
高強度化の概念
弾性率とはことなり、強度を高めるのは特別な技術が必要です。
これだけインターナショナル化した現代においても、東レなどの日本企業の製品がそこら中に使われているのは、素材そのもののレベルがほかとは違うからです。
カンタンに言うと、繊維の中の気泡があるのですが、それは容易に破壊されてしまいます。
破壊が始まると、あとはポッキリ行くのが鉄などでもなんとなくイメージできると思います。
破壊の起点をいかにしてつくらないか。
繊維中の気泡はその部分が破壊の起点となるため、強度が高いカーボン繊維はつまるところ、空隙(ボイド)がすくない。と言い換えることができると思います。
高強度化のための取り組み
Pan繊維の安定化
まずは、アクリル繊維(PAN繊維)の段階での製造技術がキーになってきます。
これが不揃いだと、後工程で変数が多くなります。
結果的に、炭化焼成中に一定値で、水素や窒素などの不純物が繊維中に残留してしまいます。
均一であればあるほど、繊維の焼成工程をコントロールしやすくなります。
焼成温度と速度のコントロール
次に、焼成温度を適切にコントロールすることです。
たとえば、急激に焼成をすると、繊維中の不純物が抜けきらない事態が発生します。
均一に揃えられたPAN繊維を適切なタイミングと温度でコントロールする高い技術や蓄積知見が必要になります。
目に見えない部分でも手を抜かない。
という日本人の特性が出てますね。
中国であれば、目に見えないところは手を抜きますし、
米国であれば、儲けに走ってしまう。
だからこそ、高度素材の分野では圧倒的な信頼感がこの国にはあるのだと思います。