ドライカーボン、ウェットカーボンの違いとは?

お客さんからドライカーボン、ウェットカーボンの質問があり、

脳疲労していたのか間違った情報をお伝えしてしまいました。

大変申し訳ありませんでした。

電話だと間違った情報をお伝えしてしまうことがありますので、メール等でいただけるとより正確な情報を提供することができます。

ご協力をよろしくお願い致します。

ドライカーボンとは?

まず、ドライカーボン、ウェットカーボンというのは、専門業界ではあまり使われないワードになります。

実務レベル・DIY等で使うワードということになります。そのため厳密な定義というのはないと思います。

大工さんが、合板のことを総称して【コンパネ】というようなイメージでしょうか。

そのため、ドライ、ウェット共に厳密な定義ではないとご理解ください。

ドライカーボンというのは、直訳、乾燥したカーボンという意味です。

カーボンプリプレグを使った方法を指すことが多いようです。

カーボン繊維の中に、エポキシ樹脂を染み込ませた状態で加工します。

この染み込ませた状態のカーボンをカーボンプリプレグと言います。


プリプレグは、エポキシ樹脂が含浸されたシートでベタベタしています。
ベタベタしてるのに、ドライカーボンなのです。

プリプレグは反応前の生物シートです。冷凍・冷蔵庫で保管しないとどんどん硬化反応が進んでしまい、カチカチになってしまいます。冷蔵庫保管でも1年から2年です。

これをオートクレーブという専用のカマで2時間(例)焼き上げるとできます。

比重はおよそ1.8になります。(炭素繊維自体は2)

FRPがおよそ1.5なので、20%重量がアップするという理解です。

重量があがるじゃん!!と言われますが、

引張強度ではカーボンの方が2倍程度強いので、

理論上、同じ重量であれば66%程度の差がでるということです。

一般的なFRPがマトリックスにポリエステル樹脂、

カーボンのCFRPがエポキシ樹脂を使用している点からも重量が増えてしまいます。

オートクレーブの温度は、およそ130度以上が一般的ですが、プリプレグの種類によって決められています。

ドライカーボンは、我々が扱う普通のカーボン繊維ではなく、最初からエポキシ樹脂が含浸されたカーボン繊維を使います。

カーボンプリプレグをペタペタ貼っていき、オートクレーブで焼き上げます。

カーボンプリプレグは、食材でいうところの【刺し身】みたいなもので、鮮度が重要になります。

常温では反応が始まってしまうので、そのくらい温度管理にシビアなのです。

使う量だけを自社の冷蔵庫に保管して小ロットで発注する。

そんな世界です。

ウェットカーボンとの違いは、繊維とマトリクス(樹脂)の違いになります。

一般的にFRPもそうですが、手作業ハンドレイアップは最も強度と材料費のバランスがよいゾーンからすこしズレてしまいます。

手作業ハンドレイアップだとマトリクスが多めになる【樹脂リッチ】状態になります。

また内部に微小なボイド(空隙)が発生し、設計強度よりも下回る原因となります。

あまり重量を気にしなければ特に問題はないのですが、カーボンFRPに求められるのは、軽量さであることが多いので、

樹脂含有量が多ければ、重い割にそれほど強度があがってない。という中途半端な素材になります。

カーボンプリプレグの良さは、予め樹脂量を決まっており、かなり樹脂が少ない状態で成形ができる。

そのため強度と、軽さの性能が極めて良いものが実現できます。

言い方を変えれば

【繊維比率が非常に高い素材】といえます。

良いカーボンは、叩くとカーンカーンと金属のような音がするはずです。

中国製の安物は、叩いたら柔らかい振動が伝わってきます。→普通のFRPですね。

工業製品としての品質のブレが少なく、軽量で強度が高い。

素材になります。

ただし、製造に大きなコストがかかります。

ウェットカーボンとは?

対してウエットカーボンとは、直訳で湿式カーボンであり、ポリエステル樹脂や、反応前のエポキシ樹脂などを現場で含浸させて硬化させるものです。

普通のFRPのガラス繊維をカーボン繊維にかえたようなものです。

ハンドレイアップで作成すると樹脂が多めになりがちです。

カーボンは相性があり、樹脂との剥離が起きやすいので注意が必要です。

ウェットカーボンは製法上、MAXの予定性能をだせないことは述べました。

重量が重くなりがち、樹脂、繊維のコントロールが難しいなど多くの問題がありますが、

一方で、コストが安い。

というメリットがあります。

見た目をカーボンにしたい。重量はそれほど気にしない。

のであればウェットを選択することになります。

中国製の安いパチもの商品が市中に出回ることがありますが、見た目は全く同じでも、性能や重量が大きく違うのは

こうした原因があるのです。

平織り・綾織の物理的特性の違い

お客様から平織り、綾織についての話もありましたので、その点についても回答いたします。

平織りの特徴

縦横の糸を一本づつ組み合わせた折り方

縦横の強度が同じになります。

交点が多く強度が下がる傾向にあります。

最大のメリットとして織り目がズレにくいので、表層に使用されるケースが多いです。

カーボンクロス

綾織の特徴

縦と横を意図的にずらした折り方です。

縦方向、横方向に引張強度が大きく変化するので、プリプレグの当て方に注意が必要。

特徴として特定の方向に強度を出したい場合などに利用。

例えば、↑方向に強度をだしたい場合など。

メリットとしては、曲がったりよれたりするので、型へあてたとき柔軟になります。

デメリットとしては、表層で使う時にヨレやすいという点があります。

カーボンクロス

クロスカーボンとUDカーボンについて

またカーボンにはUD(ユニディレクショナル)カーボンがあります。

こちらは一般的な見た目のカーボンとことなり、一方向に繊維を配列させたカーボンがあります。

こちらのカーボン繊維は繊維が一方向に配列されております。

※画像・東レUDプリプレグ

設計時のメリットとして繊維方向が一方向なので、計算がしやすくなります。

実はカーボンの多くはこちらが採用されております。

クロスは折り目があり繊維が交差する点がどうしても曲がってしまいますが、

UDカーボンは繊維がまっすぐ直行しているため、繊維本来の設計強度がでます。

ただし、UDにもデメリットがあり、衝撃を受けた時にクラックが進みやすい点があります。

クロスはクラックの進行を遅らせることができます。

そのため、安全性の担保という観点から内部、表層のみクロスを使われるケースもあります。

また施工時に、複雑形状はクロスの方が貼りやすいといった点もあります。

カーボン繊維の知られていないメリット

さて、金属材料等々でも上げていきましたが、

実はFRPの一部であるCFRP

CFRPの原料であるカーボンは繊維なので、指定方向の強度があります。

全方向ではなく一定方向です。

スルメをイメージすると、縦には引っ張っても切れませんが、横には裂ける。みたいなイメージです。

①カーボンの繊維強化方向性をつかった軽量化

たとえば、ある一定の素材をつくるとき、金属であれば全体を太くする必要があります。

カーボンによって軽量化できるというのは、実はこのあたりも原因があります。

②カーボンの繊維強化方向をつかった特性の付与

また繊維方向がある炭素繊維を使えば↑方向のみ強くするように繊維をあてることができます。

カーボンの釣り竿が、曲がるのに折れないのはこのためです。

またプリプレグの当て方、シートの当て方によって強度の重み付けをできる。

といったメリットがあります。

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運営:トマト工業

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