平安コーポレーションのNCルーター、ものづくりとは?

さてみなさまこんにちは

今日はNCルーターのお話です。

 

NCルーターは広義では木工用NCフライス盤になります。

板を自動で切り抜いていく機械です。

 

金属用との違いは、ヘッドが何本か付いている複軸が特徴だったりします。

並列何軸と読んだりします。

 

下記は8軸ものヘッドがついた門型NCルーターです。

 

主軸のベアリング交換のタイミングで営業さんがこられたので、ブログ記事にあげていきたいと思います。

 

平安コーポレーションの木工NCルーター

 

平安コーポレーション社は庄田鉄工社とともに、木工のNCルーターではトップメーカーになります。

ではその特徴はなにがあげられるのでしょうか?

 

ただたんにカタログの読み上げでは華がないと思いますので、

今回より深掘ってみていきたいと思います。

 

相変わらずこの手の記事はなんの需要があるかわかりませんでしたが、展示会等でたくさんの方から

声をかけていただけるようになりましたので、検討されている方にとっては価値があるのではないかと思います。

  

加工の主義派

  

 

ランニングソー解説でもやりましたように

機械メーカーはいくつかのタイプにわかれます。

 

剛性主義と、汎用主義です。

 

アミテックvsシンクスで、剛性重視なのか、初期コスト重視なのか。

 

それはオムライスとカレーのようなもので、どっちが優れているというわけではない。

 

と申し上げました。

好みの問題であり、消費者としては選択肢が多いことに越したことはありません。

 

では平安コーポレーションはどのような主義主張なのでしょうか。

 

平安コーポレーションの機械を一言で表すと

【とにかく頑丈】という特徴があります。

 

剛性主義派に位置づけられると思います。

 

初期コストが多少高くなっても何年、何十年と故障しづらいものづくりをしようというのが剛性主義派の考え方です。 



トマト工業でもER231Pという機種が動いておりますが、無事是名馬

というわけで、機械本体の故障は今のところなく、切り肌は綺麗で動きもスムーズです。

 

例えば、具体的に平安のER-131PMC 2513という機種ですと

弊社にある汎用ガントリーの倍程度あるように重量が段違いです。

門型のブロック構造を鋳物でつくってあり、たわみやブレを軽減しています。

 

 

 

機械の駆動はFanucのサーボモーターとボールねじをつかっています。

上下の駆動案内は、リニアガイドではなく、当時は角スライドをつかっています。※現在はリニアガイド

これも以前のブログを御覧ください。

とんでもなく頑丈な角スライドですが、故障もなくビビリが切削加工物にでにくいです。

 

平安機械の品番

  

平安の主力機はER-131PMC-2513です。

Zストロークが150mmなので、板ボード加工に特化したマシニングセンタです。

131の1は並列1軸で、3が3軸加工、1がテーブル数となっております。

そのためER-431Pは並列4軸で3軸加工、テーブル数1ということで非常にわかりやすい品番構成になっています。

連番の2513は2500×1300というワークサイズを示しています。

金属用との違いはこのワークサイズの大きさにあります。

また、5.5kw程度のブロワで、真空吸着をするのも木工NCの特徴になります。

下に向かって吸い付ける力が発生しています。

 

Pは高周波モーターです。

無印はACスピンドルモーターです。

高周波モーターは18000など高回転時に使用されます。7.5kwのモーターが標準装備です。

ACスピンドルモーターは樹脂切削など比較的低回転時に使用されます。

 

主軸モーターについては、平安コーポレーション社は自社で内製をしております。

これは庄田鉄工社と同じで、シンクス社はHITECOの主軸を使用しております。

 

 

ちなみに、我々は石膏やケイカル板を加工するので頻繁にここが故障します。

 

平安鉄工の強み

 
海外へも輸出をおこなっているようで、アメリカの有名木工家具メーカーにも大量に機械を輸出しているようです。

 

ではなぜ、イケアなどに採用されているホマッグ社ではなく、日本の平安鉄工をお客さんが選んでいるのか?

ということについて質問をしてみました。

 

平安鉄工の場合は、その高い剛性のため初期コストはかかりますが、長い目でみると非常に多くのメリットがあります。

①高い剛性による故障率の低さ

たとえば角スライドについてはノーメンテナンスで30年くらい持ったりします。多少のサビはありますが、今でも現役の機械がたくさんあります。

現在の機種はリニアガイドが採用されていますが、非常に太いリニアガイドが採用されており、フレーム構造が頑丈なため故障が少ない実績があります。

   

②減価償却を超えて働き続ける頑丈さ

また剛性によるビビリがないので、我々の平成元年式のNCルーターも現役で稼働しています。

我々の窯業土石製品製造業のカテゴリですと減価償却が約9年になります。

 

コレ以降はまさに利益を生んでくれる機械として稼働しつづけます。

平安コーポレーションの機械はこれ以降も稼働することを前提につくられています。

 

③FANUC仕様

制御という心臓部においても世界最強のCNCである日本のFANUCを使用しています。

FANUCは数十年単位で保守ができるのが特徴です。

一般の方々はあまり馴染みがありませんが、iPhoneなどの製造設備に

Fanucが大量活用されています。

つまり、制御と構造両方において、頑丈さとサポートを売りにしているということです。

 

では、これが平安の強みの本質なのだろうか。とふと思いました。

なぜならFanucであることというのは平安社の強みの本質ではないですし、コストを超えて頑丈なものづくりをすることは

極論平安社でなくてもできる可能性があるからです。

 

なぜこの平安社が、トヨタのクラウンのように

高級で頑丈で壊れず、安心して使える機械になっているのか。

 

平安コーポレーションの強みの本質

強みを知るためには、より深く知らなければなりません。

というわけで質問を繰り返し、本質に迫っていきます。
 

事業構造

現在、航空機産業や、樹脂切削など多方面に展開をしています。

木質系 25%

樹脂系 25%

プレカット 50%

といったような割合で販売をされているようです。今回プレカット機については割愛します。

 

最初は木質からスタートしていっていますが、現在は樹脂やカーボンなどのようになん切削材へとその分野を広げていっています。

 

樹脂系には航空宇宙産業とよばれるハイテク産業も含まれております。

 

精度が必要とされやすい航空宇宙産業に、比較的大型、精度はそこそこの建材用NCルーター、マシニングセンタが採用される理由はなんでしょうか?

という質問をぶつけました。

精度でいえば、金属用のマシニングセンタメーカーは山ほどありますし、精度は当然バッチリでるはずです。  

それほど超精度を要求されないようなケースにおいては、金属用のガッチガチのマシニングセンタよりも

NCルーターのような比較的中切削、中精度のもので十分であるという考え方により、こちらが選択されることが多いです。

規格外に大きいボードや、厚みのあるブロックを加工したい場合、MAZAKや、DMG森精機だと数億かかるものが数千万でできる。そんなイメージだと思います。

 

これらの金属系大メーカーだとカタログ品番から選ぶ必要がありますが、大きい板を加工するのであれば、比較的知見も豊富な建材用を流用したほうが

大きくコストメリットが出てきます。

 

とはいえ大型でかつ精度を要求されるものについてはどうしますか?という質問に対しては、

リニアスケール等オプションをゴテゴテつけることによって解決させます。

と言う事でした。

 

サーボモーターは軸の回転数で、擬似的な座標点を把握しています。

しかし機械の剛性、脱調、ねじれ、刃物のたわみ等で理論値とズレが生じることがあります。

  

リニアスケールであれば、完全なワークの絶対値をみることができるので、理論上精度がでます。

このようにして後付のオプションで、超大型超精度を実現しているという解答でした。

 

  

さらに質問を深ぼっていきます。国内の大型メーカーとの違いがわかりました。

では海外との違いはなんでしょうか。

 

さきに戻りますが、海外のメーカーがなぜ平安社を選んでいるのか。そこに強みの本質がある気がします。

そしてそれこそ、日本のものづくりが復活するためのヒントになるようなきがしました。

 

なぜ、海外の有名企業に採用されているのでしょうか?

 

聞くと少し考えたあと、解答してくれました。

 

平安コーポレーションでは、いままで様々な加工にチャレンジしてきました。

その知見を生かして、お客さんの細かいオーダーに対応できるからだと思います。

 

たとえば、海外機械メーカーですとカタログからその機種品番をえらばないといけません。

しかし平安の場合、極論高くなってもよいのであればどんな機械でも作れるのです。

 

担当営業さんはこう答えてくれました。
 

 

当然会社にとってコストというのは大事な要素です。利益をあげるために会社をやっているので。

しかしトヨタの格言にこんなものがあります。

 

買ってきた道具をそのまま使うな。

 

たとえば買ってきたスパナは一般品であり、自社に完全にアジャストしているものではない。

ということです。

この考えにおいていえば、そこをスタートとし、自社向けに改善を繰り返す必要があります。

弊社で言えば、フィルターを最適化したり、刃物を最適化、オイルの粘度を変えたり、集塵機の種類を変えたりといったことです。

 

その会社その会社に最適な機械というのは実は何万通りもあるわけです。


その場合において、こうしたメーカーの対応があれば、初期かなり早い段階から自社向けにフィットした機械を用意できるわけで、

これは大変大きな利点になるうる。そう思いました。

 

量産品は安い量産機にまかせてハイエンドの特殊、オーダー事業を取り込む。

これが平安鉄工の戦略なのかもしれません。

 

信頼性が高いと言うのは、実は基礎の部分であり、実は平安社の強みの本質はこうしたオーダー対応ができるフレキシブルな

組織構造にあるのではないだろうか。

というふうに思いました。

 

日本のものづくり産業は細かい企業にいたるまで網目のようにネットワークを形成しています。

それは平安社が存在する浜松地域において特に顕著です。

西には日本最大の工業地帯である三河があります。

 

いままで日本のうるさい需要にフレキシブルに答えてきたこと。

そういった人材が社内に複数名存在すること。

そして特注外であっても地場の協力工場などでアセンブルできること。

すり合わせをしながら細かく改善を繰り返していけるすり合わせ能力。

 

これはまさに日本のものづくりの強みそのものなのではないか。

そう思うようになりました。

 

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