FRP防水の積層のコツとは?

Q:FRP防水工事を行います。空気抜き作業≒積層作業にコツというのはありますでしょうか?

A:経験が一番大切ではありますが、
もっと大切なのはきちんとした知識を持つことです。

技術があるが、知識がないひとは施工は上手いが、成長性に乏しく
技術はないが、知識があるひとは成長性はあるが、施工が上手くない

そのため車の両輪のように両方が必要となってきます。

ではここで言うきちんとした知識というのは何でしょうか?

◎養生のポイント

これは建築用語で、塗装前に塗装箇所以外をテープをはったりシートを敷いたりして守ること。と言えます。

良い職人は現場が綺麗。

逆もまたしかりです。

良くない職人は現場が汚い。
うんちくや言う言動が極めて優れていたとしてもその現場を見れば一目瞭然です。
みなさんが家を建てるときには、現場を見てもらえると施工品質がだいたいわかるとおもいます。

この法則はほぼ100%当てはまると思います。

なぜそんなことを言えるのか、それは不必要な掃除は無駄な時間と捉えられるからです。

想定される塗装噴霧箇所+想定外の塗装噴霧箇所+プラスアルファ

優秀な職人の養生エリアは必ず広いです。

後から樹脂をこそぎとるや、汚れを落とす作業などがないようにしっかりと養生しましょう。

現場作業にはいくつか無駄があります。
1.掃除の無駄
掃除の無駄といっても想定される掃除はもちろん必要です。
ここでいうのは無駄な掃除もある。ということです。
ゴミがでるのは仕方がないですが、例えば床合板にタレた樹脂を拭き取るのは無駄です。
タレないように全面に覆えばあとは、養生シートを捨てるだけでいいのです。

2.手待ちの無駄
例えば樹脂硬化時間、プライマーの硬化時間などは手待ち時間になり、この時間を上手く利用し、現場の清掃や、養生に時間をあてるのが一番無駄がない作業だと思います。
また樹脂の硬化時間を最適化することで、手待ちの無駄を省くことができます。

一般的にFRP作業においては職人間の作業時間の差がでやすいといえます。

◎ガラスマットわりづけのポイント

ガラスマットのわりづけは重要です。

施工結果(仕上がり)というのは、最後のトップコート塗りの工程で決まるのではありません。

むしろ下地処理の効果に現れます。
優秀な職人は下地処理に占める比率が高い。

では下地処理とはなんでしょうか。

凹凸部・FRPはガラス繊維を張り込んで行きます。これに樹脂を混ぜると軟化してある程度の凹凸には馴染んでくれます。

しかしある一定の凹凸にはなじまないので、この突起物や役物に対する処理をきちんとしておくと言う事です。

角部は防水テープで角を決めておく(ガラスマットで角を施工しない)
下地凹凸はポリウレタンシーリングまたはパテで埋めておく
突起物はサンドペーパーまたはグラインダーで取っておく(グラインダーはなるべく使わない方が良いです。)
目地の段差はサンドペーパーで取っておく
ビスの入り過ぎによるベニヤの突起は取り除いておく
(浮きの原因となります。特に夏場は空気が膨張し易いので、FRP防水を膨れさせる原因となりがちです。)
下地が塗装板の場合、サンディングによって塗装を何割か剥がしておく。
(詳しくは下地処理にて)
入隅があればきちんと面木を当てる。
出隅角は防水テープまたは面取りをしておく。
塗装のための養生を広範囲にしておく。
大きめのゴミ袋を用意しておく。
最短動線を確保しておく。
(作業場、FRP作業でいうと基地は、動線をきちんと考えましょう。ここに無駄があると動線が長くなり、無駄が生じます。)
予め規定量の材料を近場に運んでおく。
(知識として仕様量がわかっていれば、無駄なく運搬でき、FRP作業中に車に取りに行くという無駄がなくなります。)


◎樹脂の塗布のポイント

まず樹脂を規定量ガラスマットに含浸させていきます。 
最初はわからないと思いますので、大目に塗っていきます。

ここでいきなり塗布ローラーでしごいて一緒にエアーを脱泡してしまう方がいますが、
これはとても非効率です。

理由は2つ

1.塗布ローラーは塗布用のローラーであり、脱泡に適していない。
そのため労力の割に抜ける気泡が少ない。
2.塗布ローラーは毛足が長くガラスマットの繊維を移動させる効果を持ちます。
つまり均一になっているガラスマットの表面のガラス繊維を移動させてしまい修正に時間がかかる。汚くなります。

そのため塗布ローラーは塗布のみを想定します。
イメージとしては置いていくだけ。

というイメージです。


規定量の樹脂を範囲内に置いていくと重力
ガラスマットの吸収効果によって勝手に含浸していきます。

こうした無料で無限の力を上手く使うべきだと思います。

ガラスマットが樹脂を吸収している間に別の作業を行うことがスムーズな作業のコツです。

◎脱泡作業

FRPでは細かい気泡が入ると物性が極端に低くなります。
これが脱泡ローラーによる脱泡作業となります。

樹脂が含浸しきると、気泡が何箇所かにかたより色が変わることがわかります。

合板下地であれば全体が飴色になります。

これが脱泡のタイミングとなります。
これから脱泡ローラーによる脱泡作業となります。

脱泡作業は豚毛ローラー、アルミローラー等を用いて空気を外部、または上部に出す作業です。

豚毛ローラーを樹脂のタンクの中にドブ漬けする方がいますが、これも非効率です。
豚毛ローラーはうまくメンテナンスすればいつまででも使用できますが、
ドブ漬けすると極端に寿命が短くなります。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
上手な職人は道具を大切にする。
という法則があります。
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ドブ漬けがダメな理由
これは豚毛のキューティクルに含浸された樹脂が硬化するとアセトンでは取りきれず、毛の柔軟性が損なわれるからです。

また中芯の摺動円に樹脂が詰まり、回転性能がおちます。

◎脱泡作業のポイント

表層を撫でるように転がし、気泡を抜いていきます。
ガラスマットにきちんと樹脂が含浸されていればほとんど手をかけること無く脱泡作業がおわります。

ここが作業が早い人と遅い人の違いとなります。

◎樹脂製作のポイント

次工程を考えると、
製作量を少なめにし、硬化時間を早くして回転数を上げるパターンと

逆に製作量を大目にし、硬化時間を長くして回転数を下げるパターンの2パターンが考えられます。

熟練者ほど前者の

作る量を少なくし、硬化時間を上げ、回転数を上げる。

というパターンになります。

そのほうが全体の硬化速度が上がり、次工程へスムーズに移れるため結果的に時間短縮になるからです。

◎バリ取りのコツ

立ち上がりの天面などでバリがあることがありますが、これは通常カッターナイフなどで切ります。

カッターで切るのは、タイミングが一番重要です。

樹脂が硬化する際、一番堅いゾーンにいくまでタイムラグがあります。

このタイムラグを利用して切りやすい柔らかいゾーンで切ります。

柔らかすぎると研磨時にFRP防水層が白化したり剥がれたりするため注意が必要です。

◎研磨のポイント

研磨作業もバリ取りと同じで削りやすいタイミングがあります。

早すぎるとボロボロになり、おそすぎると硬すぎて削り量が足らなかったりしますので、注意が必要です。

硬化が始まり、樹脂が全硬化する少し前が一番研削量があがり綺麗にサンディングできます。

◎トップコート塗装のポイント

トップコートは0.4kg/㎡
ローラーは毛足13mmの中毛ローラーです。

普通ウレタン塗料などは毛足5mmの短毛ローラーを使用しますが、
トップコートの場合、厚みをつける必要があるのと弾きやすいので塗布量を中毛ローラーでつける必要があります。

力を入れず表層を転がすイメージです。

Z型に塗ります。

塗るというと被着材に押し付ける方がいますが、これは間違いです。

なぜなら力の入れ加減で塗布量が変わるからであり、
また力を入れて塗ると、両脇にトップコートが押し出され、凹凸ができやすくなります。

一回塗った(転がした)面にはかならずローラー筋ができますが、
Zのように塗るのは、このローラー筋を消していくということです。

重力にまかせて転がすように塗布し、かつZ型にぬる。
すべては塗布量を均一化するためです。

基本的な考え方は塗布量を一定化する。

ということです。

◎豚毛ローラー洗浄のポイント

良い職人は道具を大切にする。

スポーツ選手にもいえますが、これもほぼ当てはまります。
なぜなら基本的な性能を何度もだせるようにすることがパフォーマンスの最適化に必要だからです。

大事な打席前にバットにヒビが入っていた。

などは一流選手にはありえないと思います。

脱泡ローラーとくに豚毛ローラーについては

1.樹脂にドブ漬けしない。
2.アセトンにつけ置きしておく。
3.洗浄時は少量のアセトンで何度も洗浄する。

という3点が大事です。

樹脂にドブ漬けしてしまうケースが散見されますが、
これは非常にまずいです。

樹脂は硬化を始めていますので、
豚毛内に詰まった樹脂が硬化する。
ローラー芯に詰まった樹脂が硬化する。
豚毛キューティクル内に詰まった樹脂が硬化する。

この3点で豚毛ローラーの寿命が大幅に縮まります。

ローラー芯に樹脂がつまると回転性能が悪くなります。
豚毛のキューティクルに樹脂がつまりかつ硬化すると豚毛特有のしなやかさが失われます。

というわけでアセトンにつけ置きするようにしてください。

つまり塗布用樹脂タンクとアセトンタンクを両方用意しておくことが重要です。

洗浄時は、たくさんのアセトンで1回洗って終わり。のパターンがありますが、
少量づつ3回に分けたほうが最終的には綺麗になります。

1回で洗うのは、汚れた泥水で洗濯するようなものです。
洗濯も洗浄、すすぎ、と工程が別れているように、アセトンも洗浄、すすぎ、すすぎ
と分けた方が綺麗になります。

すべての道具に愛情をもてば必ず道具も答えてくれるはずですよ。

正しい用方をまもってFRP防水をしましょう。

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