ボードに塗ったFRPがシワだらけに!!
Q:工事で不具合が出てインターネットを巡回しているうちにこのサイトを知りました。
凄い知識量ですので、こちらに相談したく
実は先日ベランダの工事で石膏板のような薄グレーのボードの上からFRP防水をかけました。
しかし硬化後に全面にシワのようなものができてしまい、びっくりしてメールさせてもらいました。
原因というのはありますでしょうか?
解決すればこのお店で購入しようと思います。
A:FRP素材屋さん馬渕です。
環境がわかりませんので細かい解答はできませんが、”おそらく”という一般論での解答になります。
下地の石膏ボードのようなボードは、不燃系の外壁用ボードみたいなものではありませんでしか?
こうした窯業系ボードは吸放湿性に問題があることが多いです。
素材が吸湿しやすく、吸湿すると寸法変化や反りにつながるという問題があります。
そのためどうするかというと、表面に下塗りして造膜し、湿気を遮断するケースが見られます。
その下塗り塗料の選定ですが、これに1液のアクリルエマルジョン系のような塗料が使われることが多いです。薄めたカルピスみたいな下塗り塗料です。
こうした塗料は実は溶剤に弱く、ウレタンシーラー中の酢酸エチルという溶剤や、樹脂中のスチレンモノマーというシンナー分で上塗りすると溶解することがあります。
つまり将来的に溶ける塗料、すべる塗料の上に塗ったことが原因になります。
上のFRP樹脂は硬化時に収縮します。
収縮率はおよそ6%程度、ガラスマットを入れてるので3-4%は体積が縮みます。
この動きに下地が滑り、縮れがでてしまっているということです。
◎改善案◎
カイゼン案としては、下地をよく研磨する必要があります。
下地処理を怠るとこうして大問題になるため、
優秀な職人ほど下地にかける時間は長くなります。
これはおそらくあらゆる職人業界に共通する法則です。
下地の研磨は研削量の多い#40番、できれば#30番の超粗手ペーパーで
ゴリゴリ削りましょう。
研削量が多いほど、接地面積が増え、密着力が増します。
メカニズム的には、
平の板から研磨で凹凸を増やすことによる接地面積の増大
凹凸があればそこに樹脂が食い込むことによるアンカー効果
が期待できます。
アンカー効果はレゴブロックのような密着方法です。
強溶剤アセトンで軽く拭いてから研磨するとより効果的です。
塗装面が削れればシーラーの浸透が早くなるので、
その後シーラーにアセトンを入れ普段よりもやや濃い目につくります。
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ガッチリとした造膜層でしっかりと硬化させます。
接地面積が増えれば、空気中の湿気(基材中の水分とも)と反応硬化する湿気硬化型ウレタンシーラーの硬化速度も若干あがります。
これで凹凸のある下地+硬いシーラー造膜層になり、上物の収縮で下地が動くことはないでしょう。
◎根本的解決案◎
と、ここまでは対症療法です。
物事の改善には、必ず根治解決が必要になります。
お施主さんは、一生に一度の家を手に入れるわけで、防水工事といえども手を抜くのは(誇り高い)職人としては問題がありますよね。
根治解決をするために、工務店さんに伝えて次回以降下地を変えてもらっていただくことを強くおすすめします。
ただ、”やりにくいから下地を変えてください”
なんて言ったらおかしなことになりますので、
”今回はなんとか施工しましたが、やはり普通の合板やケイカル板下地の方がのちのちクレームが少なくなります。ほとんどコストも変わらないのでそちらでお願いしていただけると御社にとってよろしいかと思います。”
と伝えればまず間違いなく変更してくれるはずです。
ポイントは2点
工務店さんは施主さんのクレームに敏感なので、将来のクレームがなくなる。
というメリットと、
コストに敏感なので、
コスト的に変わらないということをきちんと伝えましょう。