ベランダ床DIYの方法・FRP防水トップコートひび割れ塗り替え補修について
ベランダ床DIY防水について
Q:馬渕さん、いつも参考にしています。
当方塗装屋なのですが、外壁塗装と一緒にベランダの塗替えがよくあります。
自社で施工するとベランダのトップコート塗替えで剥離とひび割れがでてきて困っております。
よい方法はありますでしょうか?
施工方法を教えてください。
A:FRP素材屋さん馬渕です。
お問い合わせ頂き、ありがとうございました。
今回”YOUTUBE動画”にてとっておりますが、
何分施工が多岐に渡るので、施工方法について解説していきたいと思います。
DIYとありますが、本来であればきちんとプロに頼むことで施工品質も上がります。そのあたりだけご理解ください。
かなり今回大作になりますので、長文ご了承ください。
施工・解説者★1級防水施工技能士★岐阜県優秀施工技能士
工程は全9工程に分けます。
-
養生
-
簡易清掃
-
脱脂作業
-
研磨作業
-
本清掃
-
養生
-
トップコート制作
-
塗布
-
養生外し
といった方法です。
必要な物一欄
基本的な材料(20㎡分)
○トップコート イソ系の高耐候性 4kg×2(20㎡分)
○アセトン 脱脂用途 4L
○硬化剤 1%程度 100g
○ローラー 4本
○容器・内容器2枚外容器1枚
○養生テープ3種・コロナマスカー1本・PE養生1本・紙養生1本
○研磨ペーパー #30番超荒手 2枚
○計量スポイト
○保護手袋 タイトハンドグローブ厚手
○ウエス ハンドタオル2枚分・3等分くらいに切っておくと便利
○ゴミ袋大型推奨 45L以上
○作業用スリッパ
と言ったところです。
手配が面倒な場合は、面積ごとで注文できます。
必要材料については
下記リンクの計算シートで水槽内面積を参考にしてください。
手計算される場合、床面だけでなく立ち上がりと呼ばれる垂直面もありますので注意ください。
トップコートの基準塗布量は0.4kg/㎡になります。今回20㎡だったので、トップコート8kgにて行いました。トップコートの必要量は上記で計算した平方メートル数×0.4にて行います。10平方メートルの場合、10×0.4=4kg計算が面倒という方のためにトップコート量の目安を下に記載しました。以下トップコート必要量目安5㎡=必要量2kg7㎡=必要量2.8kg10㎡=必要量4kg12㎡=必要量4.8kg15㎡=必要量6kg20㎡=必要量8kg25㎡=必要量10kg
トップコートは見て分かる通り、物性が低いとすぐに劣化・損耗してきます。
必ずイソ系の高耐候タイプを選択してください。
トップコートと他の簡易防水塗料との違いを聞かれますが、みた通りです。
トップコートは樹脂であり、簡易防水塗料はウレタンのようなゴム形状です。
膜厚もトップコートが0.3-0.4mmに対して簡易防水材0.1-0.2mmと半分以下になります。
補修例:トップコートが紫外線で劣化してFRP防水層が見えてきています。
○ベランダ防水補修状況について築15年の戸建て住宅・FRP防水です。
最終層の塗装があまり強度が高くないものを使用しており紫外線によって損耗しています。ただ、防水層自体は2mm以上ありそうで、膜厚は確保されているようです。しかしむき出しの防水層が毛羽立ってきており至急の塗り替えが必要です。
樹脂が紫外線によって体積減少し、内部のガラス繊維が出てきている状態です。
下記レベル表の2-3の間です。
トップコートの全体40%が剥がれており、うち1%程度がめくれています。メクレに関してははがせる部分だけ剥がす事でトップコート塗り替えのみ対応ということにしました。※剥離がひどい場合はトップコート塗り替えだけではだめです。
FRP防水の再施工が必要になります。ベランダの補修レベルについては下記参考にしてください。
※日当たりによっていかに劣化がすすんでいるかがよくわかります。太陽光のエネルギーというのはすごいパワーがありますね。
- 養生
まずは養生(保護)が必要になります。
サッシ部や入り口は頻繁にモノとヒトが出入りするので、きちんと保護します。
今回DIY対応ということで、新聞紙で行いました。
本来であれば透過しない養生シートを使った方が良いです。
新聞であれば必ず複数枚引く事を標準にしてください。
新聞を引き、養生テープで止めています。
養生エリアは大きめにとっておいてください。
養生エリア、養生範囲は広ければ広いほど良いです。
新聞が養生材に適していないのは、
1.液体が浸透すること
2.穴が空きやすいこと
の他に
3.フローリング上では滑りやすいことが上げられます。
滑りは養生テープですべらないように固定します。
安いものなので、ケチっては行けないですね。
2.簡易清掃
清掃は最初は簡易で行います。大きな異物を払って以後の作業をしやすいようにするものです。
3.脱脂作業
アセトンを容器に取り、ウエスで拭いていきます。
脱脂の目的は、表層の油分を飛ばすことです。
溝については水分が溜まりやすいので、苔が生えていることが多いです。
この部分はアセトンで拭き上げると乾燥しやすくなります。
手袋はタイトハンドグローブを使用しています。
トップコート塗替え道具で大事なのは、手袋です。
塗料が付着したままサッシや部屋に入ると、あたり中塗料まみれになります。
そのため付着したら捨てる。付着したら捨てるといったように付替性が大事になります。
アセトンで溶ける手袋もありますので、溶けないこと、ある程度手に密着していること。樹脂のような粘着性のある塗料に引っ張られないこと
の要件を満たしていることが重要になります。
アセトン脱脂作業はざっとで良いです。この後研磨工程が入るので、ここでがんばりすぎないこと。
4.研磨作業
研磨は番手30番です。
|
トップコートは膜厚がつくので30番手程度で研磨しても問題ありません。
ゴリゴリ研磨してください。
プライマーで研磨作業をなくすものもあります。
|
勘違いしやすいですが、プライマーによる密着性よりも研磨により密着させる方が密着性は高くなります。ここはテストにでますよ。(なんのテストだ!)
プライマー<研磨作業という重要性になります。
研磨目が細かいと、表層の凹凸の内部にトップコートが入らず、接地面積が逆に減ってしまいます。
トップコートに関しては荒手がベターです。
薄い塗装には細かい番手を。厚い塗膜には荒い番手を。
#30を使う理由は研削性の高さです。
番手の粗さ(数字の低さ)と研削量、作業スピードは比例します。
1パスで削れる量は番手のあらさに比例します。特にFRP防水は塗膜が非常に硬いのでこれの研削量を稼ぐにはなるべく大きな番手が良いです。30番、最悪40番を使いましょう。トップコートの食いつきも良くなります。
30番は研削性は高いですが、手が傷つきやすいので、必ず手袋を着用して下さい。
研磨の方法は縦横クロスさせたほうが密着力が高くなります。
かならず研削方向を交差させてください。
コロナ処理というのは、このビニールの表層にコロナ放電で凹凸傷をつけるものです。これによって付着した塗料が滑りにくくなる処理です。
養生のポイント
写真のようにマスカーはきちんとピンと貼っておく事が必要です。
たるんでいると風を抱き込んで落ちてきたりします。
550巾と1100巾がありまるごと外壁下部をカバーできます。
養生範囲、エリアは広ければ広いほどよい。ここはテストにでますよ。(だからなんのテストだ!)
壁の塗装が養生テープで取れてしまうことがありますので、事前にチェックしてください。
剥がれ落ちるとすると再塗装が必要になります。
○養生時注意すべき壁
以下の壁はハガレることがありますので、注意してください。アクリルエマルジョン系塗装左官壁塗装壁(塗装自体は良くても下地への付着性が悪いものは剥がれてきます。)
養生テープ、マスカー、マスキングテープそれぞれ良く使用されますが、
これらに共通するのは、ノリが残りにくいです。しかし塗装を剥がしてしまうことがあるということを覚えておいてください。テープ付着力>塗装密着性=剥がれる
塗装密着性>テープ付着力=剥がれない
ここもテストにでますよ。(なんのテストだ!)
マスキングテープは常にピンと貼ることが大事です。ピンと張ることで直線を出していきます。
つまり張って貼る。
ここもテストにでますよ。(なんのテストだ!)
初心者は塗装に時間を割き、熟練者は前準備に時間を割く。ここもテストにでますよ。(なんのテストだ!)
トップコートに骨材を混ぜます。
骨材は比重が重いので注意が必要
セットは500gですので、割合で重量目安にします。
骨材はトップコートに対して重量比10%を上限とします。
ベランダが滑りやすい場合は、骨材を多めにつるつるにしたい場合は、骨材を少なめに
調整できます。
硬化剤の割合は重量比1%程度です。
トップコートも季節型があります。鮮度が低いもの、季節型があってないものは硬化不良をおこしますので、注意してください。
はじめての方は一度に作る制作量を減らしてください。
○制作量の目安基準は2kg程度、余裕があれば増やしてください。最初の方は1kg程度で立ち上がり、端部を塗ってください。
大事なポイントは強く押し当てて塗っていくのではなく、基準塗布量で平均化していくこと。まんべんなく慣らしていくことが重要です。タテ方向に塗るとローラー目が出ます。
そのローラー目をヨコ方向に塗ることで平均化させていきます。
塗布が重要ではなく、その前工程が重要になります。
比重としては前工程9割、塗布1割
こんな感じです。
異物がたくさんあるとこれを拾う時間がかかってしまいます。養生が悪いと役物、端部で塗布に時間がかかってしまいます。前工程が大事というのはそういうことです。
○硬化物性についてよく勘違いされますが、トップコートは塗装後数時間で硬化したように見えますが、
まだ物性は出ていません。
トップコートも徐々に物性が変わっていきます。
そのため乾いたようでも硬いものでゴリゴリすると剥がれてしまったりします。時間がたつほど物性が上がっていきます。
実質2時間半の作業でした。
慣れてない場合は4時間くらい見ておきましょう。
楽しく作業をしていきましょう。
塗布のメリット
トップコートを塗ることで艶が出て綺麗になる。
ゴミが溜まりにくくなる。
工事を機にベランダが綺麗になる。
水ハケが良くなる。
10.後工程・メンテナンス
目皿の詰まりがコケの原因となります。
10年もたつとゴミがキャップを塞いでいることが多いようです。
ついでにベランダのキャップも新しいものに変えておきましょう。
○トップコートの目安
1kg2.5㎡硬化剤10g
4kg10㎡硬化剤40g
10kg25㎡硬化剤100g
20kg50㎡硬化剤200g
大変参考になります。
FRPトップコートセットを購入させて頂きました。
2つ程質問があるのですが、
①研磨はディスクグラインダーの研削砥石を使っても大丈夫ですか?
②本清掃の時は、アセトンでの掃除は必要ありますか?
ありがとうございました。
①グラインダーでも大丈夫ですが、トップコートに深いキズがでます。
この傷は、再塗装しても凹凸で出てきます。
グラインダーよりはオービダルサンダーのほうが適しています。
30番、40番のサンドペーパーでサンディングするほうが良いです。
②本清掃のときは、前後にアセトン脱脂を入れていただくとより効果的です。
離型効果のある油分を除去する工程となります。
どうぞよろしくお願い致します。
説明ではプライマーを塗ってあませんが、不要ですか?
トップコートの塗り替えは既存下地がポリエステル系トップコートであれば研磨してそのまま塗布できます。
すみません質問させてください。
トップコートは2度塗らなくて大丈夫でしょうか?
基本的に1回塗りです。
よろしくお願い致します。