材木の貼りあわせ
よく合板などの張り合わせができるの?
というお問い合わせを頂きますが、当然できます。
もともと木材系の貼りあわせの加工屋だったのです。
ですがそれぞれの材質によって接着剤を選定しないとエライ目にあうので注意が必要です。
通常接着には非常に大量の接着剤を使います。
なぜこんなことを言うかといいますと、コストとの兼ね合いになるからです。
通常畳一枚分を3尺6尺(910*1820ミリ程度)といいますが、
(一般的な尺モジュールの住宅にあわせたサイズ)
これだけで接着剤約300g~400gも使用します。
このノリは木工用ボンドのような白いノリです。
これは多くの部分を水分が占めるので、それが乾燥、または移行することで残った固形分によって固着します。
お好み焼きのようなイメージですね!
したがってこの接着剤を木質材料に乗せると接着剤中の大量の水分が基材に移行し、ソリがでるケースが多々あります。
↑※化粧板と軽量スチロールの接着物、奥はケイカル板とスチロール、アルミの複合板
手前のロット品はマシニングセンタで4方トリミングしています。
ソリをなくすには溶剤系のものに変える、他の性質のものに変えるといった方法があります。
ちなみに今まで接着した素材は
合板
MDF
パーチクルボード
プラダン
ダイライト
ケイ酸カルシウム板
フレキシブルボード
発泡スチロール板 EPS
発泡ポリスチレンフォーム XPS
ウレタンフォーム
ポリプロピレン板
ABS板
FRP単板
ポリエステル化粧合板
メラミン化粧合板
プリント合板
強化紙化粧合板
塩ビ化粧合板
オレフィン化粧合板
ハードボード
インシュレーションボード
などさまざまです。
年末にメラミンの大判と合板の貼りあわせのお仕事が急遽入ったことがありました。
繁忙期のため、先代に手伝ってもらったのですが、
メラミン化粧合板とラワンランバーの片面貼りのお仕事です。
(完全に木工業ですね。)
メラミン化粧板とラワンランバー合板の場合、接着剤を酢酸ビニル系(木工ボンド)で接着すると水分の移行でソリが出る可能性があります。
メラミン化粧板の方には水分は移行せず、ラワン合板の方に水分が移行することでラワン合板が広がり、反りになります。
水分を使用しないゴムノリ系という選択肢もありましたが、ゴムのり系の最大のデメリットは再貼りあわせができないということです。
1230ミリ×2430ミリの1.2ミリの高価でペラペラなメラミン化粧板をラワンに貼り付けるとなると一発勝負のため、リスクを避けることにしました。
そこで選定したのが溶剤系の耐水、耐熱のハイグレードのウレタン接着剤です。
溶剤は乾燥を抑えた酢酸エチルを選択しました。
しかしながらこの製品は湿気硬化型ウレタンを原料にしています。
ウレタン中のイソシアネートと水分の反応によって硬化するタイプです。
このタイプは水分が補充できない点において接着不良の可能性があります。
それは木材のように道管から水分を補給出来れば良いのですが、メラミン側からは一切水分の補給ができません。
水分を噴霧する手もありますが、木材のソリの観点から水分補給は中止しました。
酢酸ビニルのように水分の揮発によって硬化するものだとソリの問題があり、あえてウレタンを選択しました。
お客さんに了解をとってこの接着剤を選定しました。
接着加工の日程とお客さんの日程が合わず、急遽欲しいということで前日夜中までかかって大急ぎで総出で張り合わせをし、プレスで一昼夜抑えておこうという予定を立てました。
職人気質の先代はこれでは性能が立たず接着不良を起こす可能性が捨てきれないということで反対しましたが、お客さんの意向もあり、私の判断で次の日プレスを開けて出荷することにしました。
次の日無事に出荷してホッとしていたところでお客さんから電話があり、パンクと呼ばれる膨れができているというクレームをいただきました。
結果的に先代の心配どおりになってしまいました。
おそらくは懸念していた水分の補給が間に合わず、硬化しきれていない所でプレスを外してしまったのが原因と思われます。
プレス2台で貼りあわせたのですが、
プレス圧が高い方はなんともなかったのですが、低い方は接着不良を起こしてしまったようです。
ウレタンの湿気硬化型は膜厚があつすぎると表層のみ硬化し、内部が硬化しないケースがあります。
プレスの圧力が高いとノリが分散し接着層が伸びるため、硬化が早まります。
しかしプレスの圧力が低いとノリが分散しきれません。
そのため、内部層で膜厚が厚くなります。
このケースでは基材中の水分と接する表層部のみ硬化し、他は硬化しないケース、つまり
内部が”ウイスキーボンボン”のように硬化しないことがあります。
ウイスキーボンボン現象によりパンクが生じたという仮説が立てられます。
このケースではお客さんの顔をたてることを優先してしまった私のミスでした。
反省を踏まえて今後の張り合わせをして行かなければならないと強く思った一件でした。
貼りあわせは大変奥が深いものです。