貼合=てんごう・はりあわせの加工のお話。
昨今、工場の方ではとても貼りあわせの話が増えてますので、
前回の貼合の記事を改変してお伝えしたいと思います。
※前回の記事を加筆修正したものです。
ここ最近自転車の日記ばかりなので
たまには仕事の話もしなければならない。
そう思います。
工場は現在電話がひっきりなしであり、
新規受注案件が増えています。
中国などからこちらへ移管するとてもありがたい仕事や
小ロット対応の仕事が大変多く、
それぞれが難題が多いため頭がパンクしそうです。
自転車のパンク直してる場合じゃないですね。
お客様に感謝です。
工場では現在切削よりもむしろ
”貼合””シーラー”などの加工が多くなっています。
これらは単純なカット加工、切削に比べ生物(なまもの)です。
塗料や接着剤は、
気温の変化
湿度の変化
によって対応をかえるべきであり、
その分加工前段取り(フィッティング)に神経と時間がかかります。
数が少ないにもかかわらずこだわりがありあまり細かいことを言われると
断らざるを得ない場合もありますが、
そんな場合は決まって後から電話攻撃
または鬼電で
西野カナの彼氏の気分がよくわかります。
とにかく
やってもらわねば困る!!
と力説され、困ってしまうことも多々あります。
それだけ小ロット加工ができる加工屋さんが減ってしまっていることの現れかと思います。
トマト工業の場合、数の割に良心的な価格のため、
どちらかというと工場の設備を動かすための仕事という側面が大きいです。
貼合(はりあわせ・てんごう)とは、A+Bを接着剤で貼り合わせたり、A+B+Aというように貼り合わせ、
軽量化したり、厚みを変えたり、表面硬度を高めたりするものです。
今日の貼合は、
ケイカル板5t両面研磨品+スチロール18t+ケイカル板両面研磨品
の貼合です。
上部・スチロールケイカル板サンドイッチ品
下部・MDFケイカル板サンドイッチ品
ケイカル板は紙すきのように製作するので、
仕上がりがどうしても凹凸ができます。
貼合品NCルーター切削風景
裏面は、メッシュの目などが見え、凸凹状態になっております。
貼合時には、この凹凸が悪さをし、点接着になるため、これを平滑化する必要があります。
ガラスのような平滑面にシールをするとよくくっつくのに対し、
凸凹面だと、これが剥がれやすくなるというイメージです。
これを変成エチレン酢酸ビニル系接着剤
EVA
ではりあげます。
これは
通称
エヴァンゲリオン
という言葉で広く我々の業界では知られているところです。
この
EVA
で接着します。
トマト工業は基本的にノリは非常によい物を使っています。
通常この位のものであれば、
酢酸ビニル樹脂系接着剤
いわゆる、木工ボンド
で
接着します。
これは通称酢ビ(さくび)であります。
トマト工業では、そのあたり
非常によい物を使っています。
価格の高いものを使っております。
では、ここで言う接着剤におけるよいものと安いものとは
どのように違うのでしょうか?
◎ソリ
まず、安い木工ボンドの例でいくと、固形分が38%であとは水62%となります。
これが弊社の通常の接着ボンドの場合、固形分が約56%となり、水44%となります。
固形分量にして約1.5倍
粘度が高く粘りがあります。
この濃度の接着剤は、木工のノリ業界では
天下一品グレード
そもそも
あのスープについては
出されたもんは全部飲み干すべき派
という
いわゆる正義派と
あんなもん全部飲み干すと絶対体に悪い派
いわゆる
俗論派にわかれて
論争になったほどの
濃度
そのドロドロさ加減は、
昼ドラレベル、
日本有数と言われております。
その分うまいですが。
さて
接着剤に話をもどし、
この場合、安いノリ(水分量が多い方・ショビショビのノリ)
は水分量
が多いため
基材に多く水分が移行してしまいます。
基材に水分が多くなると、水分を吸水した分基材が広がります。
紙に水を垂らすと水分を吸った紙が広がって凹凸になりますよね。
この片側の接着面における基材の広がりが
ソリの原因となります。
平面において接着剤がかかっている方の基材が広がり、
逆に接着剤がかかっていない方は基材はそのままのためソリが起こります。
反りを制するものは、
木工を制す。
これを木工では
そりまち たかし
反町隆史
または
ぽ い ず ん
ポイズン
と呼ぶことはすでに皆様も十分ご承知の通りだと思います。
製作例:ガルバリウム鋼板・合板貼合品※ウレタン樹脂溶剤系接着剤使用品
また次工程で塗装などをかけると、
この安いノリの高い含水率のため、
塗膜のフクレを起こしたり、
リフティング(ハガレ)を誘発したりします。
仮に塗装で6方向全部を覆った場合、内部の水分が逃げ場をなくし、気温の上昇と
ともに、水分が蒸発し、塗膜を押し出す。
ということがおきてしまうのです。
見た目には、全く分かりませんが、ノリの組成である、水分と固形分の関係とはそのようになります。
◎耐水性
木工ボンドは、お湯につけると簡単にふやかります。
これは接着層における接着剥がれを意味し、水分に弱い接着物ということになります。
これが高耐水性の接着剤を使用すると、水分に強い接着物を作り上げることが出来ます。
こういった意味から接着剤はその選定が重要になってきます。
トマト工業では、超多品種小ロットのため、ノリのコストを抑えるというよりも、汎用性を持たせるために
を選定しているということになります。
ちなみに
こちらは悪いノリになります。
話が再三脱線事故を起こしてますので、
元に戻しましょう。
つまり様々なグレードの貼合を一種類で行うことができる
高いグレードの糊が標準と言う事です。
ではノリでコストがどのくらい変わってくるのかともうしますと、
この辺も難しいところでございますが、
企業秘密もどんどん開示する。このあたりの姿勢はもっと評価されていいのではないかと思っております・・・
。。。。
そもそも糊単価というと
基本モジュールの3×6尺に対して一枚あたりの糊塗布量が
どのくらい使うかを計算してみましょう。
ラミネーターであれば
約100g、
貼合であれば
約300gから400gが標準であり、
200円/kg単価の糊であれば
ラミネーターで約20円、
貼合であれば60円~80円であり、
のり代が仮に1.5倍になっても10円~30円変わってくるだけになります。
であれば、多少割高になっても性能の方を取るべきという判断です。
激安の殿堂・ドン・キホーテのような加工屋さんですと、ここにまでコスト削減が及ぶ可能性があります。
さて、トマト工業の
接着剤の取り扱いメーカーとしましては、
1.コニシさん
2.高圧ガスさん
3.オーシカさん
4.住友林業クレストさん
5.昭和電工さん
6.中部サイデンさん
といったところが代表、有名なところです。
我々の特徴としまして、独立系でありますので、
ノリについてはこちらのラインに合わせて選定をしているのです。
※接着剤メーカーのお客さんの加工の場合を除く
最近では、ロールコーターやラインに合わせて
接着剤の粘性を調整する
6.森川商店さんのような会社もあります。
厚紙同士を貼合する合紙加工の場合、基材同士を
きちっと角合わせしなければなりませんが、
サイズが4尺×8尺サイズ、幅1200mm、長さが2500mmもあるため
たるむ基材を角合わせするのは至難の業です。
そこでスベリ性のよい糊に変える事で、仮貼合した後のかどあわせをしやすくしたり、
1パスでの塗布量をあげることでスベリ性を上げる。といったテクニックが使える
酢ビ、デンプンそのたいろいろな配合で
お客さんの加工にあったベストの接着剤を調合しています。
ラミネーター(化粧紙貼り)においては、
通常熱源を用いた強制乾燥ラインや
長くて速いライン構築が基本となります。
全長25mプールのような大きさのラインもあります。
しかし弊社のような 中小規模の加工屋においては、
ロット、スピードよりもむしろ回転率を重視しております。
いわゆるケイデンスと呼ばれるものです。
はじめから超小ロットをターゲットとする加工屋においては
この長いラインがかえって歩留まりを悪くすることもあります。
頻繁な紙交換がある場合、
ライン上で仕掛り品が滞留するからです。
(ラインが長いほどライン上にある加工途中品が増えてしまいます。)
では乾燥を短く、
ラインもコンパクトにするにはどうするかというと、
糊を改良するということになります。
そもそも木工ボンドと速乾木工ボンドの違いがわかりますでしょうか?
これは実は樹脂固形分の比率になります。
速乾タイプの方は樹脂固形分が多く、見方をかえると水分が少ないです。
通常タイプの方は樹脂固形分が少なく、見方をかえると水分が多いです。
そのためラインが短い場合、固形分が多く、すぐに固まる水分の揮発の速いタイプを選べばある程度の乾燥は改良できることになります。
これは実際にラミネーターを入れて見て感じたことです。
そもそも紙をはるラミネーターという機械には標準品とよばれる
基準機種が存在しません。
すべて相手のライン、工場に合わせてラインを構築するような形態が一般的になります。
それだけ相手先が大企業、中堅企業になりやすく寡占化が進んでいるということです。
特注で作られる完全オーダーなラミネーター機
現在日本全国でラミネーターを持っている会社というのは、
約40社を超える程度しかありません。
この数字は年々減って来ております。
10年というスパンでみると激減と言っても差し支えありません。
弊社の隣には山加産業さんがあり、
ここは我が岐阜県でも最大のラミネーター加工工場です。
ラインも幾つかあり、
新鋭の高速ラインから小ロットラインまであります。
このように大型の設備で最新の設備を持つ所はよいのですが、
それ以外の中小規模の加工屋さんはその数を大幅に減らしているのが現状です。
その分、細かい仕事の受け皿がなくなってきているという
状況が続いているのです。
こうした細かいエリアこそ
我々が生きる道
と言っても過言ではないでしょう。