【サーフボード補修の基本】クラック修理の完全ガイド【DIY】
Q:
素材の観点からサーフボードのPU,EPSについて解説ください。
A:
FRP素材屋さん馬渕です。
いつもお世話になりありがとうございます。
基本的には、技術が必要なため、
プロのリペアショップへの持ち込みを推奨しています。
そのうえで、軽微な補修について、今回概要を説明していきます。
私はサーファーではないので、プロショップの方が基本的には何倍も知見がありますので、
概要の説明とさせてください。
サーフボードの補修:理論と実践
サーフボードは、その構造上、衝撃や経年劣化によって破損することが避けられないスポーツ用品です。
適切な補修は、ボードの寿命を延ばし、パフォーマンスを維持するために
不可欠なメンテナンス作業となります。
補修の必要性と主な破損原因
サーフボードに補修が必要となる主な原因は2つあります。
①物理的な衝撃と②素材の劣化に集約されます。
直射日光のある屋外であることや、見た目の華やかさとはうって変わってハードなスポーツであることから、破損と劣化が避けられません。
そこで、きちんとした補修技術が大事になってくるわけです。
- 物理的衝撃による破損(クラッシュ)
- 接触: テイクオフ時の他のサーファーとの接触、ボード同士の衝突、
岩礁やサンゴ礁への接触などが挙げられます。
ノーズ、テール、レールといったボードのエッジ部分は特に脆弱です。 - 打痕(デッキのへこみ): デッキ(上面)に立つことによる足の圧力や、外部からの衝撃によって生じる表面的な凹みです。
どちらかというとPUボード(ポリウレタン+ポリエステル樹脂)で顕著に見られ、強度が低下する可能性があります。
- フィンボックスの破損: 角が傷みやすいことは経験でわかると思います。
フィンがぶつかったり、着地時の衝撃が加わったりすることで、フィンボックス周辺にクラックが入ったり、ボックス自体が破損したりします。
- 接触: テイクオフ時の他のサーファーとの接触、ボード同士の衝突、
- 水分の侵入
- FRP(繊維強化プラスチック)層に生じた微細なクラック(ひび割れ)から水が芯材(フォーム)に侵入する最も危険な破損です。
水が浸入するとフォームが水を吸い込み、ボードが重くなるだけでなく、
内部で剥離(ラミネート層が芯材から浮き上がる現象)や劣化が進行し、
最終的にはボードの寿命を大幅に縮めてしまいます。
- FRP(繊維強化プラスチック)層に生じた微細なクラック(ひび割れ)から水が芯材(フォーム)に侵入する最も危険な破損です。
- 紫外線による劣化
- 紫外線(UV)は樹脂の分子構造にダメージを与え、
黄変や脆化を引き起こします。特にポリエステル樹脂は黄変しやすい特性があります。
PUフォーム
- 紫外線(UV)は樹脂の分子構造にダメージを与え、
素材別:適切な補修材の選択
サーフボードの補修において最も重要な点は、ボードの素材(芯材と使用されている樹脂)に適合した補修材を選ぶことです。
誤った樹脂を使用すると、ボードが溶融したり、硬化不良を起こしたりする致命的な結果を招きます。
基本的に、ポリエステル樹脂の中に入っているスチレンモノマーという溶剤が入っております。
これが、スチロールを溶かしてしまうので、EPS(発泡スチロール)フォームには使えないという解答になります。
ちなみにスチレンモノマーは、他のシンナー溶剤と異なり、硬化後も物体内にとどまり続けるという特殊な溶剤になっています。ポリエステル樹脂の中には30-40%含まれています。
判断方法: ほとんどの既成ボードは、フィンボックス周辺やグラフィックの近くに素材を示すマーク(PU/PE、EPS/EPOXYなど)が記載されています。
不明な場合は、購入店やメーカーに確認しましょう。
軽微な破損のセルフリペア手順 PUの場合
ここからは、
FRP層の表面的なクラックや小さな打痕に対する基本的な補修手順を解説します。
- 破損箇所の準備
- 乾燥: 破損部から水が浸入している可能性がある場合、完全に乾燥させることが最優先です。数日間、直射日光を避け、風通しの良い場所でボードを立てて乾燥させます。フォームに水が染み込んでいると、補修してもすぐに剥離する原因となります。
- 清掃: ワックス、砂、油分などをアルコールで丁寧に拭き取ります。
EPSにアセトンをつけると溶けるので、アセトンや、トルエンなど強溶剤はなるべく避けたほうが無難です。 - 研磨: 補修箇所の周囲を#80〜#240程度の粗目のサンドペーパーで軽く研磨し、表面を粗らします。これにより、新しい樹脂の密着性が向上します。剥がれかかっている古い樹脂やバリも除去します。
- ガラスクロスの準備
- 破損箇所の大きさや形状に合わせて、FRP素材屋さんガラスクロス#200を数枚(通常2〜3枚)カットします。
ガラスクロス#200にはバインダーと呼ばれる特殊なコーティング材があり、相性があります。
最悪層間剥離を起こすケースもあります。
重ねて積層するため、徐々に大きくなるようにサイズを変えるか、均一なサイズで複数枚用意します。
また、ついでに補強したい部分の増し貼りも可能ではあります。 - 角は丸くカットしてください。応力集中が分散され、剥がれにくくなります。
- 破損箇所の大きさや形状に合わせて、FRP素材屋さんガラスクロス#200を数枚(通常2〜3枚)カットします。
- 樹脂の調合
- 使用する樹脂(ポリエステルFRP素材屋さんPC6150TMTまたはPC550カーボン用樹脂エポキシの場合RSF816)に、指定の割合で硬化剤を正確に混ぜ合わせます。
- ポリエステル樹脂: 硬化剤の量で硬化速度をある程度調整できますが、多すぎると急激な発熱・硬化、少なすぎると硬化不良の原因になります。基本的に熱反応が進むと収縮率が高くなります。そのため、あまり高熱にならないようにコントロールすることも重要ですね。
- エポキシ樹脂: 主剤と硬化剤を厳密な比率、RSF816では正確に100:40で混ぜる必要があります。計量器(はかり)を使用し、正確に測ることが不可欠です。混合が不十分だと硬化しません。
これは、エポキシが、AとBが正しく手を繋ぐ形式の硬化方法だからです。
そのため、軽量が不十分だと、相方がいない樹脂が残留し、強度を低下させます。
- 使用する樹脂(ポリエステルFRP素材屋さんPC6150TMTまたはPC550カーボン用樹脂エポキシの場合RSF816)に、指定の割合で硬化剤を正確に混ぜ合わせます。
- 樹脂の塗布と積層
- 破損箇所に少量の樹脂を薄く塗り、FRP素材屋さんガラスクロス#200を重ねていきます。
- ブラシやプラスチック製のスキージ(ヘラ)を使って、クロス全体に樹脂を均一に浸透させます。気泡が入らないように丁寧に押し出しながら作業します。
- 必要な層数のクロスを積層し、最後に余分な樹脂をスキージで取り除き、できるだけ平滑にします。
- 硬化
- 樹脂が完全に硬化するまで、埃のない場所で静置します。直射日光下は避けるべきです。
- ポリエステル樹脂は比較的速く(数十分〜数時間)硬化しますが、
エポキシ樹脂は時間がかかります(数時間〜24時間以上)。
https://www.youtube.com/watch?v=xivsTp5YEsE
- サンディング(研磨)
- 樹脂が完全に硬化したら、盛り上がった部分やバリをサンドペーパーで研磨し、ボードの元の形状に合わせて滑らかに仕上げます。
- 最初は粗い番手(#120〜#240)から始め、徐々に細かい番手(#320〜#600、最終的には#1000以上で水研ぎ)へと変えていくことで、美しい仕上がりになります。
- 特にエッジ部分は、元のレール形状を損なわないよう慎重に研磨します。
- 樹脂が完全に硬化したら、盛り上がった部分やバリをサンドペーパーで研磨し、ボードの元の形状に合わせて滑らかに仕上げます。
- 仕上げ(オプション)
- 研磨後、コンパウンドで磨くことで光沢を出すことができます。
プロのリペアショップへの依頼
以下のような重大な破損の場合は、専門のリペアショップに依頼することを強く推奨します。
- ボードの折損(折れてしまった場合)
- フィンボックスの大きな破損や脱落
- 広範囲にわたる剥離
- 内部フォームへの大規模な浸水
- 複雑な形状の破損
個人的に想うのは、
プロのリペアは高額になることもあります、しかし、ボードの性能や安全性を確保するためには不可欠です。
無理なセルフリペアは、かえってボードを再起不能にしてしまうリスクがあります。
補修時の安全対策
樹脂や溶剤は有害な物質を含むため、必ず以下の安全対策を講じましょう。
- 換気: 風通しの良い場所で作業するか、換気扇を使用し、作業中は常に換気を行います。
- 保護具:
- 手袋: 耐溶剤性のゴム手袋を着用します。
- 保護メガネ: 目への飛散を防ぎます。
- マスク: 有機溶剤用マスク(防毒マスク)を着用し、ガスや粉塵の吸入を防ぎます。
- 火気厳禁: 樹脂は引火性があるため、火気の近くでの作業は絶対に避けてください。
サーフボードの補修は、少し手間はかかりますが、自分のボードを大切にし、長くサーフィンを楽しむための大切なスキルです。最初は小さな傷から挑戦してみてはいかがでしょうか?