防水下地について

よく、防水下地は何がいいかと聞かれます。

美観性、防水性能の面から少しお話ししようと思います。

私も少し前まで施工を毎日のようにやっていました。
ベランダの床ですので、それほど気にはなりにくいとはいえ、
お施主さんにとっては一生に一度の買い物になります。
防水性能はもちろんのこと、最大限努力して綺麗に仕上げようとしていました。

800件以上施工に関わってきましたが、
その施工体験の中で得た経験と知識を元に、防水下地についてお話ししたいと思います。

【構造用合板「針葉樹合板」】

コレが施工件数として一番多いです。
特徴として節が多く、表面がざらざらしています。
防水層を綺麗に仕上げるには、下地処理を入念に行う必要があります。
さらにソリがあるため、目地部分が凸型になりやすいです。

防水の厚みが2.5~3.0ミリなので、この目地の高さが高すぎると目地消しが非常に難しい時があります。
また、雨に濡れる部分だと、水分を吸収して、ベニヤの積層板の剥がれがみられることが多いです。

ただし、表面の凹凸があるため、造膜系のウレタン系プライマーでは接地面積が極端に多くなります。
接着能力は非常に高く、密着力は高いといえます。
反面、密着能力が高すぎ、下地の動きに追従しやすいという面もあります。
目地部分の処理は慎重に行う必要があります。
そのため、トマト工業では独自の防水目地テープを使用して目地の絶縁をおこないます。
夏場に木材の道管部分から空気が熱膨張して浮き上がり、フクレを起こす場合があります。
いろいろ悩ますのがこの下地なのです。

【合板「シナベニア・ラワンなど」】
化粧系でソリも少なく、かつ節もないため、非常に綺麗に仕上がる構造体です。
コスト面でやや高くなるため、採用するところは少ないです。

【サイディングボード】
ニ○ハのモ○ンサイディングなどを防水下地とするタイプです。
サイディングボードは表面にアクリル系?の塗装か、薄い紙などが張ってある場合があります。
これは、樹脂が硬化する際の乾燥収縮によって浮き・シワ・フクレを起こす場合があります。
表面は平滑なのですが、ウレタン系プライマーなどの相性は最悪です。

ただしウレタン系プライマーでも造膜の堅いタイプでかっちりと固めれば、浸食がないことがわかりました。
以前は堅造膜タイプ(アイカJU)を使用していましたが、
トルエン、キシレンなど健康によくない物質の問題もあり、
九州塗料工業(Pシーラー)というプライマーを使用しています。
(ベランダとはいえお客さんにとって大事な買い物なので健康によい物を優先しました。。)
これは堅造膜ではないため、やや下地の浸食がみられます。
トマト工業では特殊な下地処理をおこない、浸食を止める方法をとっています。
そのため、、不良はなくなりました。
しかし、下地処理にかなりの工数がかかるため、あまりおすすめではありません。
さらに数年たってから不良がでる。という症例も聞いています。

一番FRP防水と相性のわるい素材です。

【ケイ酸カルシウム板】
ケイカル板は平滑でソリもなく、ピンカドのR加工もしやすいため、下地処理も必要ありません。
非常に優秀な下地といえます。
一番鏡面仕上げができる下地といえます。
ただし、大工さんが使用する下地用の釘がかなりめり込むケースがあり、そこが穴となります。
樹脂は硬化する際、熱を持ちますので穴は熱膨張の原因となります。
熱膨張した空気はフクレの原因となる場合があるので、注意が必要です。

【ダイライト】
ダイライトは平滑でソリもなく、加工もしやすいです。
しかし、表面に無数のアナがあいているため、粘度の低いプライマーや樹脂は吸い込んでしまいます。
そのため、表層に樹脂が残りにくいという不利点があります。

あと木毛セメントやその他いろいろありますが、稀少なケースですので割愛します。

この中で一番いいのは【ケイカル板】です。
FRP防水は他の防水とくらべ、下地との密着性能が非常に高いです。
下地との密着がいいので、下地と強力に接着します。
ただし、FRP防水は密着性能がいいという反面、下地と接着が強すぎるため、目地部分で下地と下地の動きに追従してシワやクラックが入るケースが入りやすいという点もあります。

ケイカル板はこの点が優れています。
ケイカル板は表面との密着はいいです。しかし、基材自体が堅すぎないので、目地が動いた場合に、ケイカル板が先に材破し、FRP防水層が追従しにくいという利点が大きいです。接着面が材破することで、FRP防水層にクラックやシワが入りにくいという利点があります。
また、美観という観点から、ソリがないため、全体がフラットになります。ソリのある基材だと目地にソリの山ができてしまうことがあります。
工務店様や大工さんの観点からすると、
基材自体に不燃効果を持たせることができること、軽量で加工しやすいこと、比較的安価であること
などがあげられます。

それぞれの特性に合わせた防水層を形成することはとても難しいですが、職人としては非常にやりがいのある楽しい仕事だと思います。

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