フレキシブルボード外壁施工(下見板張り・鎧張り)について

さてみなさまこんにちは。

トマト工業、馬渕でございますよ。


トマト工業株式会社はこちら

フレキシブルボードは外壁に使えるのか?

フレキシブルボードを外壁に使いたいというお声をたくさん聞くので、それに関して解答していきたいと思います。

フレキシブルボードというのは昔から外壁材として使用されてきました。

しかしあまりに実例が少ないので、どうしたらいいの?という質問が非常に多い材料です。


そのためこのブログで解答していきたいと思います。

上段フレキシブルボード・下段ケイカル板

○施工○

施工の殆どが下見板張り(よろいばり)のケースが多いです。

LIXIL社HPより

○塗装について○

無塗装でいける?という問い合わせをよくいただきます。

この質問の意図はなるべく自然な質感を求めたいという思いからだと思います。


ただ、現実問題としては塗装をかけるケースが圧倒的に多いです。


フレキシブルボードはセメント板であり、表層に細かいピンホールが空いています。


無塗装だと水が侵入するのと、日陰では苔が付着する原因となるので透明な塗装をかけるケースが多いです。
現場判断になります。

表層については両側から高圧プレスしてあるので緻密な岩盤層になっており水が染み込みにくくはなっています。

ただ切断した側面については水分が入ってきます。

一般的には塗装にて処置をする必要があります。

 

また、フレキシブルボードを屋外で長期暴露しておいた実験がありますが、ここでは板が靭性を失いパキパキに割れやすくなった実証結果がでています。

 

直接雨掛りしていない部分においても同様の問題がみられました。
塗装でコーティングしておくことは問題を未然に防ぐということにつながると思います。

○質問について○

質問については圧倒的に建築設計事務所さんの問い合わせが多いです。

全体の90%です。

(歴史はあるが)目新しい材料ということと、施工実例がないことから新規性のある素材としてフレキシブルボードを検討されるケースがあります。

セメントの風合いを好まれるケースも多いようです。

なお、たくさんの施工事例がありますが、いまのところ割れてしまって取り替えてほしいという案件は一件もありません。

施工の不備というのはやはり施工によるものではないかと思います。

 

○サイズ○

 

いままでの実績としては、外壁用途に910×1820の畳一畳サイズを縦に半裁するケースが多かったです。

細かいサイズに切断して貼ることももちろんできますが、コストとのトレードオフになります。

 

厚みは6mm以上が外壁用途です。

中には4mmというケースもありました。(こちらは木毛セメント板を下地に使うケース)

 

サイズは450mm×1820mmの半裁サイズにして鎧張り(下見板張)にするケースです。

他には303mmの1/3サイズにして貼っていくケースもありました。

コストを度外視すれば、600mmや700mm等もできると思います。

○耐久性について○

●独断と偏見による強度のイメージ●

4mmについては割って隣の部屋に行くための隔壁パーテーションとして使われているので、単体ではかんたんにキックで破壊できます。

ただしこの場合、裏側が中空であるという前提です。

5mmについては踵落としで破壊できると思います。

6mmについては踵落としでは破壊できず、アンディ・フグの踵落としでないと破壊できないと思います。

8mmについては破壊しようとして骨の方にダメージが入りそうです。

一つ注意点として、フレキシブルボードは繊維がある一定方向に入っている繊維強化セメント板というカテゴリに属します。

アスベストがつかえない現在、繊維はパルプ等の比較的柔軟な繊維強化材を使用しています。

これら繊維の組成が板の強度、質感にも現れてきています。

また繊維方向が川の字のようになっており、この方向性に強度が出るようになっています。

たとえばティッシュペーパーをタテに裂くのはかんたんですが、ヨコ方向に裂こうとすると結構たいへんですよね。

スルメでも繊維方向はかんたんですが、繊維と垂直に裂こうとすると大変です。

このように組成の繊維と方向というのは実は強度に大きな影響を与えています。

一般的な曲げ強度というのは、この繊維方向(強い方)の曲げ強度になります。

あるケイカル板不燃ボードの直交方向と、水平方向の曲げ強度を調査したことがありますが、

およそ1.3倍もの強度差がでました。

また忘れてはならないのが含水率の概念になります。

水を含むと素材というのは弱くなる。というのは短絡的なイメージです。

また柔らかさと強度は比較できません。

硬かったら壊れにくいんでしょ。そう言われることがありますが、単純な話ではありません。

たとえばグミとクッキーではクッキーのほうが硬いですが、どちらがかんたんに破壊できるかといえば、

硬い方のクッキーになります。

フレキシブルボードについては練り上げたクッキーの生地みたいなものを高圧プレスします。

その後オートクレーブという高圧高温の窯にいれて焼きをいれます。

(オートクレーブ品グレードの場合)

(無印品は自然養生)

出荷後の状態では水分を多く含んで居る状態になります。

ここから平衡含水率というおちつきポイントまで含水率が下がってきます。

その状態になると安定するので、安定的な含水率といえます。

ここからさらにセメントが保持している水分が抜けてきます。

そうするとクッキーのようにパキパキになります。
これは含水率の低下により靭性がおちてくるということです。

カタログでの強度と、実際の強度がずれてくることがあります。

そのため一言で耐久性という解答ができかねるのが現状です。

○現場施工方法○

●とめつけ●

ビス金具径よりも0.5mm大きい下穴をあける必要があります。

ビスは皿頭ビスではなく、押さえつける形の鍋頭系ビスが適合品です。

ここから言えることは、一般ビスをそのまま使わない。ということです。

孔をあけて、そこに鍋頭ビスで押さえつける。こういう施工が推奨されています。

これはクッキーのように硬い素材であること。が原因です。
重要なのは、初期段階の物性をイメージすると後々クレームが入りかねないことを示唆しています。

靭性が落ちてくること、皿頭で強引にねじ込んだこと、躯体の揺れが発生すること。

が重なれば、クラックが入ることがあります。

しかしながら、下穴(0.5-1.0mm大きめ)を開けて、ナベ系で押さえ込めば問題が出にくくなることは理解できると思います。

実績のない製品は不具合が出やすいというのは、素材による問題ももちろんあるのですが、殆どは

一般的な施工方法を別の素材にも流用してしまっているから。というのが原因として多いような気がします。


●切断●

切断に関しては、

サイディング用のチップソーでもできなくはないですが、取り回しが大変なので工場でプレカットするケースがほとんどです。
利点は取り回しが軽くて楽になる。

搬入が楽になる。

ゴミがでない。

現場のカット工賃(人件費割)よりも安くあがる

とほぼほぼ利点しかありません。

工場加工のメリットを定量的に説明いたしますと、

8mmのフレキシブルボードは面積0.132㎥です。比重が1.6ありますので、重量は1枚約22.4kgになります。

含水率によって多少上下します。

イメージしやすい石膏ボードを例にとりましょう。

石膏ボード9.5mm厚より薄く、これの重量の2倍もある重量ボードになるのです。

これを現場用だと数百枚カットすることになります。

トマト工業では、PS691、というロボットで加工する最新鋭の設備で切断します。

なぜ、この設備が必要なのか。ということですが、例えば現場用のマキタ丸鋸ですと消費電力がおよそ1000w,

つまり約1kwです。

我々の切断主力機、BS692のビームソーでは

11kw+罫引鋸1kwの12kwつまり

12倍もの力で切断していくのです。

これを専用に設計された、ダイヤモンドチップソーにて切断していきます。

切断途中で刃がとまってしまったり、回転不良による蛇行、切り肌不良、ナイフマーク、斜行切断

などの問題がでづらいメリットがあります。

このあたりが工場加工を依頼される理由かと思います。


ちなみにダイヤモンドチップソーはダイヤプレートを切り出したチップを刃先に超こうロウ付けした製品で刃数

、ピッチ、刃先角度、逃げ角、台金幅、台金スリットなど各種要素で最適化されています。


○サイディングとの違い○


サイディングとの違いを聞かれるケースが多いのですが、まったくもって答えにくい部分が多いです。

なぜならサイディングの種類が膨大であるから。です。

サイディングは種類が多く、さらに毎年毎年アップデートされていきます。

各社で特性がことなり、全体像を掴みづらいという部分があります。

答えられる範囲で言いますと

比重はフレキシブルボードが約1.6もあります。

サイディングは約1.0

同じカテゴリに属するような言い方をされますが、この時点で全く別物と言えるとおもいます。

水の比重1.0、はちみつの比重1.5(推定)です。

このくらいの違いがあるのです。

○吸水による寸法変化率○

寸法変化については、0.2%以下になります。
大したことないじゃんと言われますが、サイズにすると結構なインパクトです。

この数値額面でみると、1820mmの長手サイズですと最大3.6mmもの動きがでるということになります。


突きつけで仕上げて3.6mmも狂ったらエライことになりますよね。

寸法変化の方向性については、0.2%が縮む方向性ででるのを理解する必要があります。

○ジョイントの方策○

ジョイントの方策としては、突きつけは辞めたほうがいいです。

外壁用途では目透かしでコーキングをうつ。これも辞めた方がいいです。

理由は上記寸法変化率の問題からです。

これが鎧張りが適用される理由の一つかと思います。

 

○メーカーによる色差○

意外とメーカーによって色差が大きいのも特徴です。

一つ考慮しないといけないのは、同一メーカーによっても原料によってものが全然変わってくるケースがあることです。

そのため厳密な場合、同一ロットで。ということを行っていただくケースが多いです。

外壁用途の場合、なるべく材料を小出しで納入しないことをおすすめいたします。

○価格は?○

トマト工業ホームページの

を参考にしてください。

ホームセンターには販売しておりませんが

地元の建材店ならおいてある可能性もあります。

上記説明から長期保管品には注意してください。

○加工は?○



工場での加工は、

①切断

②貼合

③有孔

④切り欠き

⑤面取り

などが可能です。

3,4mmは120円/カット

5,6,8mmは250円/カット

になります。

フレキシブルボードは8mm品で22kg、比重1.6という建材ボードの中でもトップクラスの重量系ボードにカテゴライズされます。

厚物についてはダイヤモンドソーでカットしないときれいに切れないので

若干割高になっております。

○バリの処理○

現場切断時にどうしてもバリがでることがあります。

比重1.0のサイディングを切る道具で比重1.6を切るのであたりまえです。

(水比重1.0に対し、水飴1.5です。イメージとして参考にしてください。)

バリが出た場合は、サンドペーパーでサラッとなでてあげるだけで改善します。
番手は100番程度がいいでしょう。

面取りをトリーマーで行うケースがありますが、量産は不適です。

なぜなら一般の

炭素工具鋼では切れず、高速度工具鋼(ハイス鋼)では秒速で刃がだめになります。

超硬タイプでも数十メートルで切れ味が顕著に鈍ってきます。

●シーラー処理の注意点

クリアの塗装をかけるケースが多いのですが、下地のシーラーはポリウレタン系シーラーは辞めた方が良いです。

こちらは紫外線で黄変しやすいためです。


MDI系ポリウレタンシーラーの【酸化反応黄変】になります。



施工方法について

さて、施工方法ですが、あくまで参考としてとどめてください。

サイディングの要領で貼っていく方法です。

長くなるので→鎧貼りサイディングの施工方法

について

を参考にしてください。

https://tomatokogyo.com/nikki/archives/%e9%8e%a7%e8%b2%bc%e3%82%8a%ef%bc%88%e4%b8%8b%e8%a6%8b%e6%9d%bf%e5%bc%b5%e3%82%8a%ef%bc%89%e3%83%95%e3%83%ac%e3%82%ad%e3%82%b7%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%9c%e3%83%bc%e3%83%89%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%87.html

工場見学について


こんなに無駄にながい文章を最後までみていただきありがとうございました。

質問に対し回答が非常に長くなってしまうので、文章でまとめてみました。

最後まで見ていただいた方は、設計事務所さんが多いと思いますが、
ぜひ一度来社していただきたいと思います。


そうすると実際にボードを見て、触って、質感がよく分かると思います。

あまり設計事務所さんがこられるケースがありませんが、個人的には設計の方は

【知的好奇心が群を抜いて高い職業だ。】という認識です。

そのくらい知識吸収に前向きであるという点が我々によく似ていると思っています。

商売に直接つながることがなくても、設備がどのようにして加工しているのか。を直にみていただけると

今後の設計の幅につながると思います。

なぜこの素材はこうなのか?この加工でなければならないのか?素材の特性とは?

という疑問を一つ一つ解決するのは単純にとてもおもしろいと思います。


そしてそれは良い家づくりに必ず役にたつと我々は考えております。

我々は、設計さんとのお話を通じて、試作、開発、設計者がかかえる痛みを聞きたいと思っています。

そこからニーズを深堀りし、我々のサービス改善へとつなげていきたいと思っております。

意見交換にともなう工場見学を大歓迎しておりますので、ぜひ一度来社も検討してみてくださいね。

ではまた❢❢

トマト工業株式会社はこちら

ホーム

フレキシブルボード外壁施工(下見板張り・鎧張り)について”へ3件のコメント

  1. 本多恭司 より:

    鎧張りの納まりを教えてください。
    メールアドレス に伝送頂けると助かります。自宅 の外壁改装の参考にしたいです。フレキ8ミリは@303で考えてます。

  2. rpxfn670 より:

    弊社も施工について知見があるわけではなく確証ではありませんが、
    参考になりそうな情報を添付しておきます。
    参考資料
    ラップサイディング東レ建材社
    https://www.lapsiding.toray/products/pdf/buzai2.pdf

    こちらを見ますと、ラップ幅が54mmと言う事になっております。
    ラップサイディング
    https://www.lapsiding.toray/products/

    どうぞよろしくお願い致します。

  3. 磯部庄司 より:

    外壁
    フレキシブルボード +プラスターボード12 ⊕プラスタボード12 すべて 柱断熱材の外に貼った場合 防火構造になりますか

磯部庄司 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)